考察10【地球のイデ伝説】

 前述の通りイデは我々の地球とバッフの地球に、イデの記憶をプログラムした知的生命体の種を蒔きました


果たしてバッフには『コ・ジッキ』や『旧原典』、そのダイジェスト版『原典抄』等の書物にイデ伝説の原型となる物が記され、それはやがて英雄譚に置き換えられ、口伝として人々に広がっていきました


ところが我々の地球には明確なイデ伝説は有りません

この違いについては、バッフの地球は比較的早い時期に特定の民族に依って文化が統一化された為に、伝承の保存状態が良かった、という説が有力です

我々の地球は多民族が長くそれぞれの文化を成熟させた為に、イデの記憶も多様な変化を遂げて共通の伝承ではなくなった、と言う事です


イデ伝説に似た英雄譚は我々の地球にも世界中に存在します

例えば『桃太郎』は日本人で知らない人は居ない

桃という『果実』から生まれる、とか犬、猿、雉の『良き力』を得て悪しき鬼を退治する、とか何となくイデ伝説と符合しますね


桃太郎が桃から生まれた、という日本人全員が知っている設定は、実は比較的最近の流行らしいです

明治時代までは「子供の居ない貧しい老夫婦が、栄養価の高い『桃を食べた 』ら若返って夫が絶倫になり、お陰で妻が妊娠し桃太郎が生まれた」というちょっと子供向けじゃないストーリーが実は主流でした

これこそ果実に依って力を与えられたイデ伝説と共通したイメージです

更に付け加えると、岩手に伝わっていた桃太郎は鬼に囚われていた『お姫様を救い出す』というストーリーなんです


桃太郎の物語の源流は環太平洋火山帯の島々だとする説も有り、同様の伝承があちこちの国に残ってますが、もしそうなら縄文時代以前に海洋民族により伝えられた可能性すら出て来る


また、日本神話にも海外の神話や童話にも『果実が与える力』が重要な意味を持つ物が多く、それらが融合して時代や地域に応じて桃太郎伝説の様に変化して行ったのでしょう


…と、まぁ自分なりにこじ付けて楽しんでますが、SF的見地だけでなく民族学や歴史的にも想像が膨らむ所がイデオンの面白い所だったりします


「そーは言っても地球のどの神話にもイデってワードが出てこねぇじゃん」

と突っ込まれたら確かにその通りなんですが、実は我々人類の記憶にもちゃんと「イデ」は在って、それはワードとして深く認識されてます


次項ではその辺りを少し掘り下げます