考察 7【異星人に関するSF考証①】

地球人ジョーダン・ベスと、バッフ・クランのギジェ・ザラル
地球人ジョーダン・ベスと、バッフ・クランのギジェ・ザラル



 イデオンを考察する上で、もう一つ重要なポイントが有ります

それはこの物語の主軸でもあり、世界中の数多くのSF作品では当たり前に描かれている『異星人との戦争』は、そもそも「起こり得ない」という点です


どっかの偉い学者さんの理論によると、地球に生命が誕生した確率は「25mのプールに沈んだバラバラの腕時計の部品が、水の中で偶然正しく元の時計に組み上がる位の確率」らしいんですが、その話が本当ならまずそんな確率じゃ、生命が生まれる事すら有り得なくて、やっぱ神様でも居ない事には辻褄が合わないんじゃないかと思えてしまいます


現に、太陽系第2惑星の金星は、大きさも太陽からの距離も地球とよく似ていて、双子の様な惑星ですが、地球よりほんの少し太陽に近かったが為に温室効果が早く進行してしまい、厚い二酸化炭素の雲に覆われて地表に太陽光が届かない暗闇なのに、鉛が液体で常態化する程の灼熱地獄の惑星になってます

つまりもう少しだけ条件が違えば、金星にも独自の生物が誕生し、文明が生まれて、今頃僕らは、最も身近な異星人と交流していたかも知れません


しかし逆に言えば、地球があと少し太陽に近ければ、或いは太陽の表面温度がもう少し高かったら、金星と同じ運命を辿っていたかも知れず、生物の発生も、当然僕らの存在も無かった訳です

地球型生物が発生可能な条件って、こんなに微妙なんですね

地球温暖化が問題視されてますが、つまり二酸化炭素を排出し続ける行為は、こんなにラッキーな偶然で僕らを生み出してくれた母なる星を、我々人類自らの手で金星の様な地獄に変えてしまう行為に他ならないからなんです


そうでなくても、近年、人類による環境破壊によって地球上で絶滅している生物の数は、太古の大絶滅と同数に上るとする説も有ります

例えばミミズ1匹生み出す事

それが物凄い奇跡だって事を、全人類的にしっかりと認識しなきゃいけない


話を戻します

太陽系内の他の惑星や衛星にも水やメタン等、生命を生み出す原料を持つ星はいくつも有り、衛星エウロパの氷の下にはもしかしたら魚が泳いでるかも知れないし、木星の分厚い大気を泳ぐ巨大な風船みたいな生物が居るかも知れないけど、それらが道具を操り、やがて宇宙船を開発する様な文明を持つ事は不可能でしょう


太古の昔、火星にも原始生命が存在した可能性が有るらしいけど、それも遠い過去の事

せっかく生命が誕生しても、星そのものが充分な大気と水を維持出来ず、環境が変わってしまえば進化する前に簡単に絶滅してしまうんです


地球だって過去に全地球規模の環境変化によって、何度も生態系の大絶滅が発生してる


こう考えると、たまたま文明人と呼べる迄に進化出来たのは、宇宙の中で我々だけなんじゃないか、とすら思えます


しかし、宇宙は途轍も無く広い

我々の属する『天の川銀河』だけで2千億を超える恒星系を有し、宇宙には今の人智じゃ数え切れない程、膨大な数の銀河が存在します

生命誕生も文明の発達も、超低確率かも知れないけど、こんだけいっぱい星が有れば、結構あちこちで上手く行ってるのかも知れない


だから僕的には宇宙人の存在その物は全然否定しないし、きっと中には亜空間飛行も実用化しちゃう種族も居て、宇宙の隅々まで飛び回ってたりするかも、と思ってます


ただし、我々地球人類がそんな宇宙人と出会う事が有り得るのかは全く別

ハッキリ言えば「有り得ない」


我々が宇宙人と出会えない最大の理由

それは『時間』です


長大な宇宙の時間的スケールを人の一生の時間に例えれば、人類の歴史なんて僅か数秒間の出来事でしか有りません  

この絶望的に長大な時間の中で、どこかの星に文明が発生し、生物種としての進化の寿命を全うしたとしても、それはほんの一瞬の出来事なんです


そして、宇宙はとてつも無く広い

本当に亜空間飛行やワープ航法が可能になれば、遠い遠い宇宙まで行く事は出来るだろうけど、それは三次元空間を飛ばし飛ばしに目的地に向かう行為なのであって、地上を制圧しながら進むのとは根本的に違う為、宇宙の隅々まで把握するなんて事はそもそも無理

ただでさえ『超低い発生率』の文明人同士が、『丁度同じ様な』科学レベルに達したタイミングで『たまたま偶然』出会えるか?


残念ながらNoの答えしか出て来ません


よしんば、そんな偶然が有ったとして、もう一つの問題

異星人は、果たして『人』と呼べるのか?という問題です


長くなったので、事項でその辺を掘り下げます