王妃と魔法の鏡
王妃と魔法の鏡

魔性の白雪姫

白雪姫というと、原作であるグリム童話よりもディズニーアニメの印象が強く、近年の絵本でもストーリーや登場人物のデザイン等、ディズニー版を踏襲した物が多く見られる。


ディズニー版は原作に様々な脚色が加えられた、言わば二次創作物だが、今やこの二次創作が主流と言っても過言では無い。


物語は、ある国の王妃が雪の降る夜に「雪の様に色白で、血の様に赤い頬と黒檀の様に黒い髪をした子供が欲しい」と願う所から始まる。

やがて、本当に望んだ通りの女児が産まれ、雪の様に白く美しい肌から白雪姫と呼ばれる様になる。


現在、我々が良く知るストーリーは、実母は姫を産んだ直後に亡くなり、後に彼女を殺そうとする王妃は、王様の後妻、即ち継母だという設定だが、実は一番最初の原作であるグリム童話初版では、実母が亡くなるストーリーは描写されていない。

つまり、美しい娘が産まれる様にと願った実母自身が、本当に美しく育った我が娘に嫉妬し、殺害を企てるという物語なのである。


白雪姫の美しさについては、真実しか語らないとされる『魔法の鏡』をして「国内で最も美しい筈の王妃の、更に千倍美しい」と形容する程の美貌とされる。

しかし何より驚くべきは、彼女がその美貌を手に入れた年齢は、何と7歳の時なのである。


物語の中で、以降の時間経過は詳しく記されてはいないが、それを聞いた王妃が姫を殺そうとする迄に何ヶ月もかかったとは思えず、その後の展開も恐らく数日から数週間置きに進んでいる為、姫は王子と出会う迄、7歳のままだったと推察出来る。


当時の時代背景を考えれば、10代で女性が嫁入りするのは普通だったかも知れないが、白雪姫の設定年齢は余りに低い。


若干7歳にして国内一の美女である王妃の、更に千倍上を行く美貌を得ていたという時点で、既に彼女は生れつきとんでもない『魔力』を備えていたのではないか。

寧ろ魔力無しでは説明がつかない様な奇跡的な力で、劇中、彼女は幾多のピンチを切り抜けて行く。

王妃の命令で自分を殺そうとした猟師をその天才的魅力で思いとどまらせ、その後いくつもの山谷を、野生動物に一切襲われる事無く越えて生き永らえる。

更には王妃に3度も殺されながら、全て生き返ってしまうに至っては魔物以外の何者でも無いであろう。


魔法の鏡を使い、娘の内臓を茹でて食べる等の描写から、王妃を魔女だと唱える説が多いが、実は主人公であるこの少女こそが、恐ろしい魔力に守られていたと思えてしまう。


全ての原因は、この異常なまでの美しさと魔性の力であり、それが人々を巻き込み、狂わせながら進行して行く…実は白雪姫とはそんな物語なのである。